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あたし達は何で繋がっているのかしら。

「ねぇ春花っ!春花は今週運命の出会いをするんだって!」

教室でぼんやりとパックのジュースをすすっていたら突然。
前の席の子が雑誌片手に予言をした。

「何占い?」

当然預言者じゃない彼女は嬉しそうに答える。

「星座と血液型を組み合わせてるらしいよ。結構当たるって噂!」

あたしは当たり障りのない返事をする。
多分、そうなんだ、すごいね! とか。
彼女の調子に合わせて語尾を跳ねさせたりして。
頭で
(残念だけど、今回はハズレ)
なんて見たこともない占い師に話しかけながら。
あたしはもうすでに運命の人と会ってる。
中3の夏。
暑くて暑くて
それなのに雨が降り続いてた、あの日。
雨が自分の音以外を全て否定するように降っていた日。
あたしは優に会った。
(まぁ、優は覚えてないけどね…)

「…春花は、さ。運命とか信じる方?」

いつの間にか話が進んでいた。

「運命?」

「そう。運命の相手とか、信じる方?」

もちろん

「信じてる」

あたしの返事に目の前の彼女のかおが嬉しそうなにやにやしてるような微妙なかおになって、飛びつくように言う。

「やっぱり、運命の相手とは赤い糸で結ばれてるのかなぁ!?」

赤い糸。
小指と小指を結んでる、とかいう?

「…どうかな。見えないから、わからないわ」

そう答えるとさっきの勢いがしゅん、としぼんで

「そーだよね…見えたらいいんだけどね」

と力無く言って席を立ってしまった。
何か悩んでるらしいけど、そこまであたしは世話焼きじゃない。
あたしはあたしの悩みで手一杯。
しょうがないのだ。

「赤い糸、かぁ…」

あたしと優の小指もそれで結ばれているのかな。
そうだったらいいんだけど。
でも赤い糸っぽくないよね…。
男女じゃないし。
どうなのかな、赤い糸は男女限定?
そんなくだらない事考えながらあたしは授業を全部終える。


放課後。
当然のように優と一緒に帰ろうとしたら
なんと優は家庭科の実習課題が終わってないらしい。
他の子は、もちろんあたしも今日の授業中に終わらせて提出した。
ていうか、普通残ってやらないでしょ。
持ち帰ってやるか、母親に任せるか、授業中にテキトーに終わらせる。
あたしは授業中にテキトーに終わらせる派だ。
優は、まぁちょっと不器用だけどすまそうとすれば授業中に終わったであろう装飾をしている。
優の好きな青系の色で揃えられたリボンやボタン。

(ほんっとに、真面目なんだから)

丁寧にやりすぎなんだ、優は。
いいことだけどさ。
手持ち無沙汰になってあたしは薄い青色のリボンを結んだり解いりしてる。
先に帰る、なんて選択肢はない。
一緒に帰りたいし。
(今日は雑貨屋さん行く予定だったのになー)
優には話してないあたしの中だけの予定。
言ったらきっと優は慌てて片付けて一緒に雑貨屋さんに行ってくれるけど。
でも。
こーやって教室でうだうだしてるのも好き。
優は真剣なかおで一心不乱に(まさに一心不乱に、だ。あたしがいることなんて忘れてるんだろう)布に装飾をつけている。
優の手が針を持ってゆっくりだけど確実に縫いすすんでいく。
あたしはずっとその手を見てる。
邪魔しちゃだめ。
わかってるけど
少し、さみしいよ、優。
優のかおと手を交互に見ながらあたしはまだ手持ち無沙汰にリボンを触っている。
返すべきメールもない。
携帯はそろそろ充電が切れてしまう。
そういえばさっき優の携帯がバイブで振るえた音がした。
気が付いてないんだろうなー。
真剣だもんなー。
一心不乱、これは前に優が読んでた本を覗き込んだ時に書いてあった。
とりとめのないことを考えながら優の手を見たら。
夕方の太陽で若干赤い優の手の小指に薄青色のリボンが巻き付いていた。
それを見た瞬間、あたしは無意識に。
本当に本当に無意識のうちに。
触っていた青いリボンを自分の小指に結んで。
反対側の端を優の小指に結ぼうと優の手を取った。
優がびっくりしたかおでこっちを見て、

「…はるか?」

と眉を寄せて不思議がるまであたしは無意識だった。
その声に目が覚めたようにあたしはなぜか恥ずかしくなって。
優の手を離して俯いた。
俯いたら自分の小指に綺麗に結ばれた薄青いリボンが目に入った。
(あぁ、あたしたちはなにで繋がってるんだろう)

「春花?ごめん、退屈だよね。なんだったら、先に…」

「ねぇ優。運命の赤い糸って信じる?」

唐突な質問。
意味はとくにないけど。
優は不思議そうな表情を変えない。

「私は、運命とか、信じてないよ」

「そっか…じゃぁ赤い糸もないってこと?」

あたしの声はひしゃげて教室のふちに反射する。

「春花」

名前を呼ばれて顔を上げる。
優は下を向いている。
違う。
優はあたしの小指に絡んでいるリボンの端を自分の小指に結んでいる。
さっき課題をしてた時みたいに一心不乱に。
片手では上手く結べないのか、うー、と小さく呻いてる。
あたしはその下を向いてる頭を眺めて、
それから優の手をとってリボンを結んであげる。
優の小指に若干よれたリボン。
その先はあたしの小指。
急ぐように優は言う。

「繋がってる」

あたしは呆然と相槌を打つ。

「うん…」

優は力強く繰り返す。

「繋がってる。運命は信じてないけど、今、ちゃんとリボンで繋がってる」

その言葉にやっぱりあたしは恥ずかしくなって俯いた。

(ちゃんと繋がってる。)

赤い糸じゃないけど。

「ちゃんと繋がってる」

おかしくなってあたしは少し笑った。
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