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はじまりは
ずぅっとむかし。
大きな森のそばに
小さな村がありました。
ずぅっとむかし。
大きな森のそばに
小さな村がありました。
村には一人、女の子が居ました。
太陽の光のような髪をもち、森の緑の瞳をしていました。
ある日彼女は問いかけます。
「私はだれなの?」
森は答えてくれません。
いつも窓辺に来る鳥が、小さなくちばしで謡いだします。
其れはだぁれも知らないよ・・・と
「私は、どうして生きているの」
小鳥は答えてくれません。
暖炉のかげにいたネズミの親子が、尻尾を振りながら踊ります。
其れはご飯を食べているからだよ・・・と
女の子は考えます。
なぜ、私はご飯を食べるのかしら。
彼女はまた、といかけます。
「わたしは、何のために生きているのかしら」
ネズミはもう、巣へ帰っていってしまいました。
女の子は、チョコレート色のブーツを履いて、外へ出かける事にしました。
「わたしは、何のために生きているのかしら」
通りすがりのおじいさんは、強い風に吹かれながら言います。
おかしなことを尋ねる子だなぁ・・・と。
まるで、日向ぼっこをしている猫のように。
わたしは、おかしな子なのかしら・・・?
女の子は歩きます。
赤いリボンをつけた黒猫が女の子が通り過ぎるのをじぃっとみつめていました。
やがて女の子は村のはずれ、森のはじまりに着きました。
其処には小さな家が建っています。
村の人たちから「魔女」と呼ばれるおばぁさんが住んでいるところです。
「魔女」は病気の時に薬を作ってくれたり、なくし物を探してくれます。
だから、女の子は「魔女」が大好きでした。
小さな家の、小さなドアを叩きます。
「あいてるよ、おはいり」
と、しゃがれた声が招きます。
女の子は「おじゃまします」と小さな手でスカートを持ち上げながら入りました。
「魔女」のおばぁさんは暖炉の前の、古びた揺りイスに座っていました。
「おやまぁ・・・」
おばぁさんが少しおどろいたような声を出し、女の子を見つめます。
「おやおや、こちらへいらっしゃい。外はさむかったでしょう」
「いいえ、そんなに寒くなかったわ」
女の子は白い頬を桜貝の色に染めながら答えます。
「ねぇ、おばぁさん。わたしは、だれの為に生きているのかしら」
「魔女」がお茶を入れてくれるのを待ちきれず女の子は尋ねます。
「そうさねぇ・・・お前さんは、だれの為に生きているんだろうねぇ」
ゆぅらりゆぅらりとイスが揺れます。
「わたしは、何のために生きているのかしら。
どうして、生きているのかしら。
わたしは、だれなの・・・?」
女の子は歌うように尋ねます。
おばぁさんはだまってイスを揺らしています。
おばぁさんのいれてくれたお茶が、燃えている暖炉の火をうつします。
おばぁさんは、亀が動くようにゆっくりと、口だけを動かしていいました。
「それは、森に行って、訪ねるが良いさ・・・」
それきり、おばぁさんは眠ってしまったように目をつぶり、
椅子と暖炉の炎だけが揺ら揺らと動いているのでした。
女の子は外へ出ます。
強い風が小さな家の窓に悲鳴を上げさせているのに、少しも寒くありません。
「もり、もり・・・」
女の子は小さな唇で即興の歌を作りました。
其の唄を小さな声で歌いながら、小さな足で森を目指します。
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