俺は。

「宍戸先輩、」

俺は この目には敵わない。

真っ直ぐにあの人を見つめる目。

憧れと敬意と思慕

真っ直ぐな視線に真っ直ぐすぎる程の感情をのせて、
ただ一心にあの人を見る こいつの目には。

俺は敵わない。

あの人を見つめるこいつの
さらにその後ろからでしかあの人を見られなかった。

ひねくれた尊敬と
微量の嫉妬
理由のない苛立ち
あまのじゃくな憧憬。

俺だって あの人をずっと見ていた。

だけど

「宍戸 先輩 、」

俺は敵わない。

あいつの目に
行動に感情に会話に
時間に思考に過去に

そして

絆に。

俺は敵わない。

今だに名前を呼ぶことさえ躊躇うのに。

「ししど 先輩」

「…ん どーしたんだ、若」

視線を合わせることすら
できないのに。

「いえ、なんでもありません…」

「ヘンなやつ。…悩み事でもあるのか、次期部長?」

こうやってこの人は無防備に笑うけど。

「宍戸先輩!」

「お、長太郎。先行ってろよ、すぐ行くから」

こいつに向ける笑顔と
俺に向ける笑顔が違うなんて
考えもしないだろう。

むしろ 考えるまでもなく違ってしまうのだろう。

俺がこいつではないから。
こいつが俺ではないから。

そんな決定的で無慈悲な違い。

今さら絶望したりはしないけど。

「わかりました。早く来てくださいね、待ってますから!」

駆けていくあいつの背中を
何か眩しいもののように眺めているこの人の姿を見ると。

俺は 今だに 胸が痛む。






そんな感じにチョタ→←宍←ピヨ



朝３時40分… ヒナギマキ