誰もいない町。

そして　その町は　どんどん　人の思考を　侵していくので在りました。

誰もいない町を、私は歩いていた。

巻き上がる砂埃
鉛色の空
割れた窓ガラス

全てが　灰色に覆われた町を私は歩いていた。

しかし　誰もいない町には
風の吹きぬける音と、壊れたものが泣く音しか聞こえなくて

しかし　誰もいない町には
無数の足跡と、灰色の街しか見えなくて

どこまでも続いているような　広い通りの真ん中で
私は　しゃがみこんでしまうのだった。

どこまで行っても　誰も居なく
どこまで行っても　この街から抜け出せそうに無い

どこまで行っても　代わりの無い景色
どこまで行っても　止む事の無い風の音

私まで　この町の一部になってしまったような錯覚。

しかし　そこでふと気付くのだ。

誰もいない町には　人がいるはずが無い。
ならば　私もここには居ないのではないか　と。

そう考えた瞬間　私は　
自分の部屋の　ベットの上に転がって
安堵のため息をつくのだ。

部屋の隅に　かすかに積もった
あの町の砂に気付かずに